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無線職人のつぶやき

初級編

2019/09/02

周波数のお隣さんについて

無線コラムアイキャッチ
 佐世保市には米軍基地があるのでAFN Sasebo という基地在住の関係者向けの放送局があり、通勤時間にはこの放送局のAM ラジオを聴いている。(詳しくは前回のコラムを参照)
たまに帰りが遅くなるとこのAFN が聴きづらくなる時間帯がある。それは決まって21:30~22:45 で、この時間帯はキリスト教に関連した放送を専門に行う団体の放送が行われている。
 AM ラジオは9kHz 毎に周波数が設定されているのだが、この放送は1566kHz、AFNSasebo は1575kHz。つまり、この2つのチャンネルは隣同士なのだ。そのため、一般的に云う”混信”が発生する。

 日本の放送法では日本国内での宗教放送局の設置が認められていない。そのため宗教放送局が日本に向けて放送したい場合、国外の基地局から送信しなければならない。この放送は隣国、韓国済州島から発信されているのだが、佐世保は済州島から約280km しか離れておらず、また、その送信出力も日本全国で聴けるよう250,000W とかなり大出力。よって送信出力300W のAFN Sasebo 局から約10km 離れた九州テンの佐世保工場周辺では混信が発生するのだ。

 佐世保市がある長崎県は古くから世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に代表されるようにキリスト教を信仰する人も多い。ラジオの電波は送信出力が小さくても基地局に近ければ近いほど受信しやすくなるので、この放送を聴きたいと思っているAFN Sasebo の基地局の近くにいる人にとっては、AFN Sasebo の電波が混信源となるのだ。受信機(ラジオ)は隣のチャンネルの放送で混信する場合がある。
 そこで、受信機の性能試験の一つに、聴きたい放送が隣のチャンネルの放送で聴きにくくなりにくいか調べる性能試験がある。”隣接チャネル選択度”と云う直感的にはなんだかわからない試験名称だが、携わった受信機設計でもこの性能確保に頭を悩ませたことがあった。

 製造中の受信機に使っている部品が生産中止となり、その部品を別の部品に置き換える設計を行った。試験すると製造中の受信機も、部品を置き換えた受信機も、試験結果が仕様値ギリギリとなっていた。製造中の受信機は開発時の試験ではその性能に余裕があったので、なにかがおかしいと調査したところ、試験に使用していた機材の影響で試験結果がギリギリとなっていた。別の機材に代え、性能に余裕が確保できていることを確認できホッとしたのであった。
 
佐々木竜也(ささきたつや)
この記事を書いた人の顔写真

小学生のときにラジオキットの工作を機に電子機器工作に興味をもち、中学生時代、友達の影響でアマチュア無線のライセンスを取得。大学では無線を専攻しアンテナの小型化の研究に取り組んだ。入社後はタクシーや防災無線、列車無線などの回路設計業務に従事。人生無線一筋。現職はプロダクト事業本部ハードウェアデザイン部のシニアエンジニア。

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