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無線職人のつぶやき

初級編

2025/01/30

日本で2番目に高い構造物

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前回の無線職人のつぶやきで、佐世保市針尾島にある無線塔跡について紹介させていただきましたが、今回は本店工場がある長崎県に1999年まであった日本で2番目に高い構造物について紹介させていただきます。
 
その構造物とは長崎県対馬市にあった、電波を使って船舶や航空機が自身の位置を測位するオメガ航法用の電波塔となります。
正式名称は「対馬オメガ局送信用鉄塔」と呼ばれていました。
その高さ約455メートル、直径3mの鉄塔で、2011年に東京スカイツリー(高さ634m)が完成するまで日本史上一番高い構造物でした。
自立塔ではなくワイヤーで支柱を支える支線塔で、湾を超えて固定され設置面積は1km四方におよんだそうです。
1975年に完成・運用されていましたが、衛星によるGPS(全地球測位システム)が主流となり1997年に閉局、1999年に解体されており、現在は「オメガ局跡地公園」となってオメガ塔の一部部品が展示されています。
 
オメガ航法とは10.2kHz~13.6kHzの超長波帯を利用し、電波到達距離が1万kmにおよぶ地球規模の広域電波航行システムです。
世界に8つのオメガ塔を建て、地球上のすべてをカバーし、船舶や航空機はその電波を受信し、電波の位相差を計測する事で自身の位置を特定する事ができたそうです。
※精度は1km~2km程度
   
その他、対馬にはオメガ局以外にも方式は違いますが以下の広域電波航法局がありましたが、いずれも閉局となっています。
ロラン局 1997年に運用終了 1750~1950kHzのパルス波を用いた広域電波航行システム
デッカ局 2020年に運用終了 70~130kHzの連続波の位相差を用いた広域電波航行システム
  
現在では衛星測位(GPSやGNSS、みちびき等)により非常に精度が高い位置測位システムが運用され、カーナビやスマホのマップ機能等、生活に無くてはならない技術となっています。
 
 その昔、航海術として自分の位置を特定する為に陸を目印にする地文航法から始まり、星の位置や方位磁石を使った天測航法だったものが、1940年代からは上述した電波航法、2000年に入るとGPSに代表される衛星航法・測位へと(これはロケット打ち上げ技術の進化無しでは語る事はできませんが)、わずか半世紀ほどで劇的な進化を遂げています。
 
無線と言うと、音声通話やデータ通信がイメージしやすいですが、自分の位置を知る為の手段としても、古くから電波が利用されてきたのです。
しかも地球規模で運用されており、その壮大さに驚くばかりです。
学生時代にテスト勉強で、十分な理解もせずロラン、デッカ、オメガと丸暗記した事を気恥ずかしく思い出しながら、あらためて先人の知恵や苦労を振り返りました。
 
 
溝口永実(みぞぐちながみつ)
この記事を書いた人の顔写真

工業高校を卒業後、半導体の製造装置の開発に従事。九州テンに入社後は防災ラジオやタクシー無線などの設計を手がけた、電子回路設計のスペシャリスト。開発歴は約40年に及び、現在は営業部門にてテクニカルアドバイザーを務める。釣りが趣味で、毎週どこかの釣り場へ足を運んでいる。

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