
無線職人のつぶやき
2021/06/16
電波をぶつける

2018年6月某日
今日も会社に向けて車を運転する。梅雨入りが宣言されたが朝からいい天気だ。
左手に米海軍佐世保基地(この“無線職人のつぶやき”のネタにした“AFN”の放送施設を有している)と佐世保の基幹産業の一つである造船所を抜けてこの先のトンネルを過ぎると風光明媚なシーリゾートの拠点となる九十九島ヨットハーバーが現れる。のだが、今日はその手前におじさんが居て何やら棒を振って私の快適な運転を止めようとする。
しまった!ついつい走行の調子が上がってしまい、制限速度を超過していた。
気が付く間もなく電波をぶつけられていた!
いわゆる“ネズミ捕り”だ。
ぶつけた電波と反射した電波から速度を計算してスピード違反車を取り締まっている。渋々国庫金の納付書を受け取る。
このようにぶつけて活用する電波もあるのだ。電波をぶつけて食材を加熱する電子レンジや、ボールにぶつけて速度を測るスピードガンはおなじみのぶつける電波機器でしょう。
車には電波をぶつけて車内・車外の状況を監視する安全運転支援用レーダ類が搭載されている。2005年に車内を監視するレーダ製造の準備のため複数人のチームでひと月程度岐阜県にこもったこともあった。
電波はぶつかると反射する性質を持つ、それを利用しているのがアンテナでも見られる。
棒(エレメント)が3本以上ある八木アンテナ(代表的なのが一般的な地デジ用アンテナ)の一番端っこにある長めの棒は反射器で、反射した電波をちょっと短めの棒である放射器で受けている。
数本並んでいる短めの棒は導波器と呼ばれ電波を呼びこむ特徴を持っている。
BS用のパラボラアンテナのお皿の部分も反射器で八木アンテナの反射器よりもイメージしやすいのではないでしょうか
無線通信においても電波をぶつける方式がある。
山間部に金属製の板が垂直に立てられていることがある。これは“無給電中継装置”と呼ばれ電波をぶつけて見通しがきかない地区に電波を送るために設置されていることもある。
一部のアマチュア無線家が行っている電波をぶつける通信方式が“月面反射通信”だ、文字通り月に向けて電波を出して、月面にぶつけ反射させそれを受信して交信を行う。往復約77万km以上の距離のため電波を出してから戻ってくるまで約2.5秒も要する。そのほかに電離層でも反射が起きる。特徴的なものがEスポ(スポラディックE層)と称する電離層で春から夏ごろにかけて、局地的に突発的に発生し普段は聞くことができない放送(通信)を聞くことができる。
電波はまっすぐ”届ける”だけでなく、あえて"ぶつける“ことで通信の範囲や活用方法が広がるのだ。
今日も会社に向けて車を運転する。梅雨入りが宣言されたが朝からいい天気だ。
左手に米海軍佐世保基地(この“無線職人のつぶやき”のネタにした“AFN”の放送施設を有している)と佐世保の基幹産業の一つである造船所を抜けてこの先のトンネルを過ぎると風光明媚なシーリゾートの拠点となる九十九島ヨットハーバーが現れる。のだが、今日はその手前におじさんが居て何やら棒を振って私の快適な運転を止めようとする。
しまった!ついつい走行の調子が上がってしまい、制限速度を超過していた。
気が付く間もなく電波をぶつけられていた!
いわゆる“ネズミ捕り”だ。
ぶつけた電波と反射した電波から速度を計算してスピード違反車を取り締まっている。渋々国庫金の納付書を受け取る。
このようにぶつけて活用する電波もあるのだ。電波をぶつけて食材を加熱する電子レンジや、ボールにぶつけて速度を測るスピードガンはおなじみのぶつける電波機器でしょう。
車には電波をぶつけて車内・車外の状況を監視する安全運転支援用レーダ類が搭載されている。2005年に車内を監視するレーダ製造の準備のため複数人のチームでひと月程度岐阜県にこもったこともあった。
電波はぶつかると反射する性質を持つ、それを利用しているのがアンテナでも見られる。
棒(エレメント)が3本以上ある八木アンテナ(代表的なのが一般的な地デジ用アンテナ)の一番端っこにある長めの棒は反射器で、反射した電波をちょっと短めの棒である放射器で受けている。
数本並んでいる短めの棒は導波器と呼ばれ電波を呼びこむ特徴を持っている。
BS用のパラボラアンテナのお皿の部分も反射器で八木アンテナの反射器よりもイメージしやすいのではないでしょうか
無線通信においても電波をぶつける方式がある。
山間部に金属製の板が垂直に立てられていることがある。これは“無給電中継装置”と呼ばれ電波をぶつけて見通しがきかない地区に電波を送るために設置されていることもある。
一部のアマチュア無線家が行っている電波をぶつける通信方式が“月面反射通信”だ、文字通り月に向けて電波を出して、月面にぶつけ反射させそれを受信して交信を行う。往復約77万km以上の距離のため電波を出してから戻ってくるまで約2.5秒も要する。そのほかに電離層でも反射が起きる。特徴的なものがEスポ(スポラディックE層)と称する電離層で春から夏ごろにかけて、局地的に突発的に発生し普段は聞くことができない放送(通信)を聞くことができる。
電波はまっすぐ”届ける”だけでなく、あえて"ぶつける“ことで通信の範囲や活用方法が広がるのだ。
- 佐々木竜也(ささきたつや)
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小学生のときにラジオキットの工作を機に電子機器工作に興味をもち、中学生時代、友達の影響でアマチュア無線のライセンスを取得。大学では無線を専攻しアンテナの小型化の研究に取り組んだ。入社後はタクシーや防災無線、列車無線などの回路設計業務に従事。人生無線一筋。現職はプロダクト事業本部ハードウェアデザイン部のシニアエンジニア。
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