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無線職人のつぶやき

初級編

2021/02/25

無線通信のシンクロとは

無線コラムアイキャッチ
最近耳にするおしゃれな言葉として、シンクロするという言葉があります。
直感的には、息のあった演技で魅了されるシンクロナイズドスイミングをイメージできますが、言葉の意味としては、同期する、”タイミングを合わせる”、同時に起こる等があります。
 
無線通信において、シンクロは、有効なデータの開始点を識別し、送信機送信信号に対して受信機が”タイミングを合わせる”ことで高速通信になるほど、密(高精度)なシンクロ処理が必要となってきます。
 
受信機のシンクロ処理は、相関というアルゴリズム(計算手法)を用います。
相関とは、例えばA,B異なる信号列があった場合、AとBがでどれだけ類似しているかを数値で表す計算手法です。
受信機は、シンクワード(既知であるユニークな信号列)と受信されたデータの相関を取ってその算出値がMaxとなった時点(同期点)を検出してシンボルタイミングを生成し有効なデータを抽出します。
 
スマホのFace IDに代表される顔認証システムでは、登録された顔(画像データ)と、
現在カメラで入力されている画像での比較を実施し、一致 or 不一致を識別しますが
実を言うと両画像データの比較は、この画像相関アルゴリズムを利用しているみたいです
 
シンクロ精度を高めるために、前に述べた送信信号は、無線区間伝搬中”ノイズ”が混入され、信号波形が壊れてしまいシンクロ精度に大きく影響します。
圏外でスマホ通信が途切れたり、音声に雑音が入ったり、これらは、大半がノイズの影響により同期精度が劣化していることが原因とされています。
ここで、先に述べた相関処理前に、フィルターというパーツを用いて、信号帯域外ノイズを減衰させ、必要な信号、つまり選択性(選択度)を向上させ、シンクロ精度を向上させています。
 
無線機におけるシンクロ処理に関連して、人の五感の中の聴覚(音)、視覚(画像)を識別、判断する”脳”には、優れた相関処理とフィルタが存在していると感じています。
 
人には、カクテルパーティー効果と呼ばれる、パーティーのざわざわとした騒音の中でも、会話相手の自分に必要な事柄だけを選択して聞き取り、見分ける脳の働きが備わっています。
 
潜在的にその能力は女性のほうが男性より優れていて、ある科学者の実験で、乳幼児を持つ母親は、我が子以外の乳幼児との極僅かな泣き声の違いを聞き分けれる能力があるらしいです。
 
又、先に述べた、Face IDで画像相関において課題となっている双子識別の確度についても
母親は、瓜二つの双子幼児を後ろ姿だけで判別できるらしい!
 
母子間にあるシンクロ精度に技術がいつ追いつけるのか?
かなり時間を要するのではないかと感じています。
 
深川秀午(ふかがわしゅうご)
この記事を書いた人の顔写真

幼少の頃からラジコンに熱中し、なぜ線がないのに動くのか不思議で無線の仕組み、特にラジオコントロール部分に興味を持った。大学卒業後は回路設計技術者として情報端末用の無線機(主に携帯電話に関する無線)の開発に従事。開発歴は30年以上におよぶ。
現職はアドバンストテクノロジー室のマイスター。

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