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無線職人のつぶやき

初級編

2021/01/16

無線の信号レベルと失敗談

無線コラムアイキャッチ
一般的にデジタル系の信号スイングは0~3Vです。一方、無線で使用する信号レベルの単位はμVであり、電圧の比としては3,000,000倍の違いがあります。
無線機はデジタル系の信号よりも遥かに小さな信号を増幅、伝達し、音や信号に変えています。
  
入社3年目(30数年前)の失敗談
 
防災用ラジオの開発を担当し、順調に試作品の評価に移行、評価の終盤にさしかかった段階で、ラジオ信号の入力源をケーブルを使用した測定器から運用を想定しロッドアンテナ経由に変更。その途端、これまで問題なく受信できていた信号がうまく受信できなくなってしまいました。
お気づきの方もいると思いますが、原因は防災ラジオの無線部分と併設して実装していた制御用のマイコンやメモリ等の動作ノイズが、デバイスプリント基板のパターン等から輻射しロッドアンテナ経由で無線部に妨害を与えていた為でした。

順調から一転、ノイズ対策の為の金属シールド実装やプリント基板のパターン見直し等試行錯誤を繰り返し、先輩の支援を仰ぎながら試作の全面やり直しを行い、何とか製品化にこぎつけました。
この時に初めて、前述した無線で使用する信号レベルの小ささを実感、合せてプリント基板のパターンの影響やグランドパターンの重要性などを身をもって体験する事となり、入社3年目の私には忘れられない記憶・経験となりました。

又、30年前のマイコンは数MHzで動作していましたが、現在のマイコンは数10MHz以上(もっと早い動作のマイコンもあります)、このため、無線の周波数への妨害が顕著となってきています。自分自身への妨害は”自家中毒”ともよばれ、マイコン搭載の無線機器では大きな問題となってきています。装置の中/近くにアンテナを持つ機器は、評価の早い時期にディジタル系からの妨害を確認するべきです。

昨今は機器の小型化が進み、無線機能はモジュール化され、部品として組み込む事も可能になってきています。無線の開発スキルが無くとも形にする事はできる様になってきていますが、私が経験した同様の失敗をしてしまうリスクが高まっている様にも思います。
無線の機能を盛り込む計画をされている開発者の皆さん、今一度、無線で使用する信号レベルの単位を再認識し、リスクとして捉えて開発していただければ、私の失敗は回避できるのでは。
 
 
溝口永実(みぞぐちながみつ)
この記事を書いた人の顔写真

工業高校を卒業後、半導体の製造装置の開発に従事。九州テンに入社後は防災ラジオやタクシー無線などの設計を手がけた、電子回路設計のスペシャリスト。開発歴は約40年に及び、現在は営業部門にてテクニカルアドバイザーを務める。釣りが趣味で、毎週どこかの釣り場へ足を運んでいる。

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