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無線職人のつぶやき

初級編

2020/02/03

スプリアスって何?

無線コラムアイキャッチ

電波法の規定や業界団体及び顧客仕様の規格と戦っている中、年末年始やゴールデンウィークや盆休みの大型連休に突入すると、インドア設計業務からアウトドアアクティビティへと飛び出したくなる。

プライベートで入会している地域の山岳会の仲間たちと、テントや食料等を担いで山登りを楽しんでいる。対象となる山々は時として海外にまで至ることがあるが、大抵は北、中央、南アルプスを初めとする甲信越地方や北海道、東北、中国地方などを中心とした日本全国である。山岳会の数名の仲間たちと佐世保から登山口まで運転を交代しながら車を走らせる。今でこそカーナビゲーションやETCのおかげで迷わずスイスイと目的地まで行くことができる。しかし、それらが無い時代は高速道路のサービスエリア(SA)で配布されている地図や、本屋で入手した地図本で道路を確認しつつ、通行料金も現金手渡しであった。「佐世保からですか!?遠いところからはるばると。」と料金所の方に声をかけられたこともあった。

移動中の道路状況確認はSAの交通状況案内か、所々で聞くことができる道路情報ラジオ(ハイウェイラジオ)である。この放送もAMラジオで聞くことができ、ほとんどの道路情報ラジオは1620kHzで放送されているが一部1629kHzになっている。

なぜだ?

これに前回、前々回とこのコラムに登場したAFNが絡んでくるのだ。AFN Saseboの他、数局のAFNは1575kHzなのだがAFN Tokyoは810kHzで放送されている。

無線機や電子機器で周波数にかかわる信号を設計する場合、必要とする周波数信号の2倍や3倍の信号が発生してしまう。この現象をスプリアスという。そのまま電波として発する別の無線機と混信してしまう。スプリアスの発生をなくすことはできないため、発射強度を抑える設計を行い、スプリアスの届く範囲を狭め混信を防いでいる。しかし、スプリアスの強度が弱くても送信機(放送局)と受信機(ラジオ)の距離が近ければ近いほど、受信しやすくなり、場所によっては混信してしまう。そのため、AFN Tokyoの放送局近くの道路情報ラジオは810kHzの2倍の信号(1620kHz)による混信を避けて1629kHzとなっており、利用者は安心して聴くことができるのだ。

電波法にはスプリアス発射の強度の許容値に関する規定(スプリアス規格)があり、2005年から測定方法が改定され2022年12月以降には改定後のスプリアス規格に適合していない無線機からは電波を発することができなくなるようになる。

もし今、貴社の製品がまだ新スプリアス規格に対応していない場合はお気軽に九州テンへお問い合わせください。


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(2023年12月20日更新)
旧スプリアス規格は、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等を考慮し、使用期限及び、有効期間が「当分の間」延長されています。
詳しくは総務省ホームページでご確認ください。

(総務省:無線設備のスプリアス発射の強度の許容値)
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/spurious/index.htm

 
佐々木竜也(ささきたつや)
この記事を書いた人の顔写真

小学生のときにラジオキットの工作を機に電子機器工作に興味をもち、中学生時代、友達の影響でアマチュア無線のライセンスを取得。大学では無線を専攻しアンテナの小型化の研究に取り組んだ。入社後はタクシーや防災無線、列車無線などの回路設計業務に従事。人生無線一筋。現職はプロダクト事業本部ハードウェアデザイン部のシニアエンジニア。

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